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瀬川晃?伊澤宥依(産業文化研究センター 技術支援専門職)

サインとは一般的に案内看板や標識を意味しています。トイレのピクトグラムやフロアマップなど、不特定多数の利用者に向けて案内や誘導、規制といった情報を発信する役割を担います。しかし、運用や時世の変化によって、サインの情報を補強する、あるいは新しい意味を補填するために“貼り紙”が追加されます。
サインスタディでは2020年度からソフトピアジャパンエリアをはじめとした公共空間を対象に貼り紙サインのリサーチを実施しました。貼り紙の情報に矛盾が生じていることや、増加したサインによる無秩序な景観から、多くの貼り紙は運用方法が十分に検討されないまま制作され、放置されている現状が窺えました。これらの現状を踏まえ以下2つの視点から持続可能なサイン計画のケーススタディを実施しています。

 

1.公共空間における持続可能なサイン計画

公共空間でサインの役割を担う“貼り紙”に着目し、ヒアリングとケーススタディを通して制作者の立場から貼り紙サインの運用方法を提案しています。また、利用者と管理者それぞれの視点から意見を得ることを目的に、IAMAS関係者及び指定管理事務局を対象としたアンケートを実施し、効果の検証を行っています。

貼り紙サインの制作に用いられるツールはMicrosoft PowerPointやWord、ExcelそしてOS標準搭載のフォント、カラープリンターとコピー用紙、場合によってはラミネーターやラベルプリンターなど、一般的な事務ツールが基本です。発生した問題に対し低コストかつ迅速に対応できる利点がありますが、掲示位置や内容の整理、掲示後の運用などが曖昧な物が多く、無秩序な状態で放置されます。昨年度はOffice365を使用した臨時休館のデザインフォーマットを提供し、制作時の利便性向上や情報の視認性を検証する試みを行いました。

左)改修前の扉
右)改修後の扉。矛盾したサインを撤去し、マークのみに集約した。

さらにサインの改修を通して運用方法を検討しています。今年度に改修した扉のサインでは、ラベルプリンターで表記が貼られた上部に、開放厳禁の文言が追加され、さらに全体を見ると現在は利用できない旨が貼り紙で記載されていました。確認したところ、この扉はイベント時などでない限りは締め切っており、取手近くのサインは以前の運用が残ったものでした。現在はカッティングシートで施工した進入禁止のマークに変更し、3つのサインを撤去しています。以前貼られたサインがそのまま残ることで情報が矛盾していたこのサインですが、改修作業では粘着テープの経年劣化によって復帰に手間取ることが度々あり、更新性の配慮に欠けていることが無秩序化する一因になっていると考えられます。

 

2.素材や施工から得られる知見の研究

貼り紙サインの周辺環境に対し、一般的な事務ツールでは制作できないサインや什器、素材によって得られる効果を検証しています。

左)本来の使用方法
右)什器と貼り紙のサイズが不一致な事例 

ソフトピアセンタービルに設置されているサイン什器の多くは差し替えが可能ですが、ほとんどが特殊サイズで一般的な事務ツールでは制作できません。そのため、出力できる用紙サイズで制作された貼り紙は、什器の上から、あるいはドアや壁に粘着テープで貼り付けられることも多く、撤去時に壁紙が剥がれたり、劣化した粘着テープの跡が残るなど、汚損を招いています。屋外での掲示が必要な場合も、貼り紙の強度が足りないため、劣化が激しく、情報が見えない上に景観を損ねる原因となっています。長期的に運用するのであれば、劣化する度に同じ貼り紙を作り直すよりも、環境に見合った素材や方法へ変更した方が、管理上の負担やコストの軽減に繋がる可能性があります。
特に出入り口のガラス面に掲示することが多いため、掲示用の粘着テープの変更や、長期の掲示物は粘着テープを使用せず、再剥離可能なシートを使用するなど素材の検証を行っています。
IAMAS事務局前も、壁面へ職員配置図を掲示していましたが、現在は磁石で貼り替えが可能な什器を設置しました。このサイン什器はテープ類が不要であることや、A4?A3サイズの用紙が掲示できること、市販の材料で加工できること、イノベーション工房で制作可能であるというIAMAS学内に限定した持続可能なサイン什器として、実験的に制作しました。什器自体も制作データのみで運用し、必要な時に必要な分制作することや、その後の運用に合わせて什器自体を更新することを想定しています。

ポスタースタンドの設計

昨年度より、管理者と共同で改修を進め、協議したり、定期的に全館のサインを点検していく中で、管理者の視点も変化しています。ヒアリングでもよりサインの環境を俯瞰した意見が多くなり、昨年度に比べアンケートのコメントも問題を自覚的に捉えた回答が増加していました。
今後の活動では、定期的に環境を更新できる運用方法の設計を上記2つの視点から引き続き取り組みます。また、管理事務局内で運用するガイドラインの設計と提案を実施し得られた知見を同様の諸問題を抱える公共空間の当事者へ共有することを目指します。